財産分与の文例と書き方をわかりやすく解説
【目次】
1.財産分与の文例と書き方
‐離婚チェックシートを利用しませんか?
2.住宅ローンを完済している不動産の財産分与
3.住宅ローンを返済中の不動産の財産分与
‐住宅ローン以外の問題点とは?
4.動産(家具や電化製品)の財産分与は面倒?
5.理想的な財産分与の進め方と相場
‐財産分与の相場について
6.離婚協議書や公正証書を作るか悩んでいる方へ
先ず不動産の財産分与の詳細をお伝えする前に、
離婚協議書や離婚公正証書を作る時に役立つ文例や書き方を解説します。
離婚協議書と離婚公正証書全体の文例もあります。詳しくはこちらです。
(※ 実務で使っている15個の文例と書き方なので是非ご覧下さい。)
離婚協議書や離婚公正証書を作る予定がない方は、
この項目を飛ばして2.住宅ローンを完済している不動産の財産分与をご覧下さい。
↓の青文字が1.財産分与の文例と書き方(テンプレート)になります。
1号 家やマンションの財産分与
甲と乙は、財産分与として令和5年1月1日に、
甲単独名義の不動産を甲が全て取得することで合意した。
(※ 不動産情報の記載は省略しています。)
2号 お金の財産分与
甲と乙は、財産分与として令和5年1月10日に、
預金500万円を甲が50万円、乙が450万円受領した。
3号 動産の財産分与
甲と乙は、財産分与として令和5年1月5日に、
甲はテレビと冷蔵庫を取得し、乙はエアコンとパソコンを取得した。
(※ 家電の製品情報の記載は省略しています。)
①財産分与とは?
財産分与とは婚姻中に蓄えた財産を清算(分配)するものです。
主に不動産・お金(預金など)・動産(電化製品など)、以上3つに分類されます。
財産分与では「婚姻中に蓄えた財産」がポイントになるので、
独身時代に蓄えた財産や相続で得た財産は対象外となります。(分配不要)
(例 妻の結婚前の貯金は夫に分配する必要はない。)
財産分与の請求期限は離婚後2年以内(時効、除斥期間)となっています。
②家やマンションの財産分与について
不動産の財産分与は話し合いで自由に決定できますが、
住宅ローンが残っている場合は銀行からの制約を受けるので、
間違った結論を出さないためにも専門家への相談をお勧めします。
また不動産の財産分与で離婚後に名義変更をする場合は、
移転登記(司法書士)や税金(税理士)に関する準備が必要となります。
詳細は2.住宅ローンを完済している不動産の財産分与以降でお伝えします。
③お金の財産分与について
お金の財産分与(主に預金)は直ぐに現金化できるものなので、
離婚後のトラブルを防ぐためにも「分配した」という証拠を残すことが大切です。
「分配金は50万円ではなく80万円だから残り30万円を払え。」
離婚後、甲に悪意があればこのようなウソをつけるので記載する意義はあります。
ちなみに退職金や借金の財産分与については、
離婚時期や状況に応じて個別検討が必要なので解説は差し控えます。
(※ 退職金や借金については専門家への相談をお勧めします。)
④動産の財産分与について
動産(家具や電化製品)も財産分与の対象となります。
動産は種類が多いことから話し合うのが面倒だと考えがちですが、
お金の財産分与と同様にトラブル防止に役立つのでよく話し合って下さい。
「テレビを譲ると言ったけど、やっぱり返してほしい。」
離婚後、乙が甲に再請求をする可能性があるので記載する意義はあります。
注)甲が乙に対して再請求をするケースもあります。
尚、清算条項という条件を入れるとこの再請求は防げます。
清算条項の詳細については清算条項の書き方と文例をご覧下さい。
⑤自動車の財産分与について
文例にはありませんが自動車も財産分与の対象になります。
物理的に自動車を半分に切って分けることはできないので、
話し合いで2つの選択肢(乗り続ける、又は売却して現金化)から選びます。
ただし、ローンが残っている自動車の財産分与については、
ローン会社からの制約を受けるので専門家への相談をお勧めします。
⑥証拠の日付について
財産分与では養育費のようにお金を支払う合意もありますが、
基本的には「財産を清算した」という証拠の合意が多数を占めます。
この証拠の合意は離婚後のトラブル防止に役立つので、
文例1号~3号のように証拠の日付を記載することが望ましいです。
この日付は合意した日になるので、全て同じ日になるとは限りません。
⑦子供の財産について
子供の財産として子供名義の預金が考えられます。
預金の財産分与は預金をした経緯によって対応が変わります。
子供の将来(予備校代や学費など)を考えて積立をしていた場合、
財産分与の対象になるので夫婦間で分配方法について話し合うことになります。
ただし、このケースでは子供の将来のためだけに使うと約束して、
子供名義の預金全額を親権者に託す(管理)という結論を出す夫婦が多いです。
一方、子供名義の預金の内訳がお年玉やお小遣いの場合、
財産分与の対象にならないので分配方法の話し合いは必要ありません。
つまり子供固有の財産となります。
⑧財産分与の分配方法について
財産分与の分配方法は折半(50%)が公平だと考えられていますが、
夫婦の離婚時の状況・離婚後の環境に応じて柔軟な結論を出すこともできます。
柔軟な結論とは折半以外(7対3など)での分配です。
ちなみに文例2号では甲が不動産を取得した代わりに、
預金は乙が9割(500万円の内450万円)を受取るという結論を出しています。
⑨離婚チェックシートを利用しませんか?
協議離婚で話し合う離婚条件は財産分与だけではなく、
親権・養育費・面会交流・慰謝料・年金分割などたくさんあります。
この離婚条件の情報は自分達で集める必要がありますが、
「有益な情報を集める方法がわからない」という問題を抱える方が多いです。
この問題を解消するのがオリジナルの離婚チェックシートです。
離婚チェックシートがあればこのページや他のページを読む必要はありません。
離婚協議書や離婚公正証書作成のご依頼を頂いた場合、
離婚チェックシートの送付&内容説明(90分程度)から始めています。
(離婚協議書や離婚公正証書の詳細はこちらをご覧下さい。)
当事務所には20代~30代のご依頼者様が多いので、
チェックシートには養育費と面会交流に関する質問を多く掲載しています。
全13ページ63個(養育費18個、面会交流13個)の情報を掲載しています。
もちろん財産分与に関する質問も掲載しています。
具体的には↓のように○×回答の質問を多く掲載しています。
例1「不動産の財産分与のチェック項目(7つ)」
例2「預金の財産分与はどのように記載する?(選択肢は3つ)」
離婚チェックシートがあれば効率のいい離婚協議が期待できます。
ご依頼者様にも好評です。詳細は離婚チェックシートの内容と使い方をご覧下さい。
2.住宅ローンを完済している不動産の財産分与
先ず不動産とは家やマンションのことを言います。
住宅ローンを完済している場合は銀行からの制約を受けないので、
夫婦間の話し合いで揉める可能性は低く主に2つの選択肢から解決を目指します。
2つの選択肢とは?
A案 不動産を売却して現金を分配する
B案 一方が不動産を取得し他方に現金を支払う
先ずA案は不動産を売却してその売却益を分配するので、
分配割合さえ合意できればスムーズに進むという特徴があります。
(例 売却益1000万円の内、夫が500万円、妻が500万円受取った。)
ただし、不動産は直ぐに売れるとは限らないというデメリットがあります。
そしてB案は一方が不動産を取得して他方に現金を支払うので、
具体的な支払額の合意さえできればスムーズに進むという特徴があります。
(例 夫がマンションを取得する代わりに妻へ現金600万円を払う。)
このB案は文例1号と2号に近い内容となります。
QB案の支払額の相場ってある?
不動産の価値はバラバラなので相場というものはありません。
お互いが公平だと納得できる支払額の算出方法としては、
不動産屋に現在の価値を確認してその半値を支払額にするというものです。
(例 マンションの価値が1200万円だから半値の600万円を支払う。)
不動産屋は1社ではなく複数の会社に確認することをお勧めします。
尚、B案で不動産の名義変更(夫から妻へ)が起きる場合は、
法務局での登記が必要になるので司法書士への相談をお勧めします。
(※ 司法書士に依頼をせず自分で移転登記の手続きをすることも可能です。)
また税金の相談は税理士へ相談することをお勧めします。
こういう訳で住宅ローンがない不動産の財産分与については、
上述の通り、揉める可能性が少なく不動産を自由に扱うことができます。
3.住宅ローンを返済中の不動産の財産分与
住宅ローンを返済中の場合は銀行からの制約を受けるので、
解決するための選択肢は少なく夫婦間の話し合いが長引くことが多いです。
3つの選択肢
C案 不動産を売却する
D案 住宅ローンを一括返済する
E案 離婚後も一方が住み続ける
先ずC案は不動産を売却するということなので、
売却額が住宅ローンの残額を上回っている(+になる)必要があります。
(例 売却額が1000万円で住宅ローンの残額が500万円ある。)
ただ住宅ローンの残額が少ないケースを除いて、
下回る(-になる)ことが多いのでC案を選択できる夫婦は少ないです。
(例 売却額が500万円で住宅ローンの残額が1000万円ある。)
この下回る状況のことを「オーバーローン」と言います。
次にD案は住宅ローンの残額を一括返済するということなので、
一括返済できれば2.住宅ローンを完済している不動産の財産分与に変わります。
ただ住宅ローンの残額が少ないケースを除いて、
一括返済する現金を用意するのが難しいのでD案を選択できる夫婦は少ないです。
選択肢C案とD案を選択できる夫婦は少ないので、
この2つの選択肢は「解決できる選択肢」とは言い難いです。
最後にE案は離婚後も一方が住み続けるということで、
言葉通り、不動産の名義人が住み続けて住宅ローンも払っていきます。
(例 不動産の名義人である夫が住宅ローンを払いながら住み続ける。)
QE案で不動産の名義人を夫から妻へ変更できる?
住宅ローンが残っている場合は夫婦間の合意だけで変更できません。
銀行への相談と承諾が必要になるので名義変更をすることは難しいです。
銀行の承諾とは住宅ローンの借換を指しています。
妻に安定した収入がないと銀行は住宅ローンの借換を認めてくれません。
こういう訳で住宅ローンが残っている不動産の財産分与は、
現実的な話としてE案しか選択できないという夫婦が多いです。
不動産の財産分与では住宅ローンの問題以外にも、
↓に該当する場合は追加で話し合って解決する必要があります。
住宅ローン以外の問題点とは?
◇ 共有名義になっている
◇ 連帯保証人になっている
◇ 養育費の金額の問題
先ず不動産を購入する時に離婚するとは考えていないので、
共有名義にしていたり、連帯保証人になっているケースもあります。
共有名義については離婚後も共有するという夫婦は少ないので、
どちらの名義(単独名義)にするかという話し合いが必要となります。
上述の通り、住宅ローンが残っている場合は銀行の制約を受けるのでご注意下さい。
連帯保証人については抜けたいと考えるのが自然なので、
銀行に単独債務の可否を相談したり、新しい連帯保証人を見つける必要があります。
(例 銀行に妻が連帯保証人から抜けて夫の単独債務にできるか確認をする。)
現実的な話として、連帯保証人になってくれる人を見つけるのは難しいです。
最後にE案を選択した場合は↓のような養育費の問題が起きやすいです。
夫「1人でこの家に住むのは広すぎる。」
夫「住宅ローンに加えて養育費の支払は厳しい。」
上述の通り、家やマンションの購入時に離婚を考えていないので、
このような問題が生じやすく養育費支払の話し合いに影響が出やすいです。
(例 離婚後の収入と支出の計算をしてみると妻が望む養育費を払えない。)
こういう訳で住宅ローンが残っている不動産の財産分与では、
話し合いが難航して揉める可能性が高く、なかなか進まないケースが多いです。
端的に言うと「八方塞がり」という状況になりやすいです。
4.動産(家具や電化製品)の財産分与は面倒?
動産とは?
◇ 自宅にある家具
◇ 自宅にある電化製品
動産とは自宅(家やマンション)にある家具や電化製品を言います。
量(種類)が多いことから話し合いは面倒だと考える夫婦が多いです。
このような理由で財産分与の話し合いを避けた場合、
離婚後↓のようなトラブルに巻込まれる可能性が出てきます。
元妻「テレビを譲ってほしい。」
元夫「今頃言われても困る。自分で買って下さい。」
正直な話「たかがテレビ」と思う方もいるかもしれませんが、
新生活を始めた矢先に言われると気分がいいものではありません。
(注 元妻からの請求ではなく元夫から請求するケースもあります。)
こういう訳で面倒だと考えても話し合いはして下さい。
ただ全ての動産を話し合うのは大変なので↓のような解消案があります。
A夫妻の財産分与の例
◇ テレビ
◇ 冷蔵庫
◆ エアコン
◆ パソコン
◆ プリンター、洗濯機、空気清浄機etc
(◇は夫が取得、◆は妻が取得)
動産の財産分与では自宅内の家具などが対象なので、
全ての家具などの分配を目指すと時間がかかるというデメリットがあります。
離婚協議書や離婚公正証書を作るご依頼者様の多くが、
動産については↓のように感じていてその気持ちは十分理解できます。
夫妻「1つ1つ話し合うのは大変です。」
この問題を解消する方法として↓のような2つの方法をお伝えしています。
方法1「離婚後、譲ってと言われたら嫌なものだけ話し合う。」
方法2「高価なものや個人的に思い入れのあるものだけ話し合う。」
方法1と2の内容については言葉通りの意味となります。
当事務所ではいずれかの方法を使って合意を目指すご依頼者様が多いです。
上述のA夫妻は方法2(高価なモノ)を使って合意に至った例となります。
最後に動産の財産分与では方法1や2以外の分配方法もあります。
詳しく知りたいという方はお気軽に当事務所の無料相談をご利用下さい。
5.理想的な財産分与の進め方と相場
財産分与は不動産・お金・動産と量(種類)が多いですが、
1つ1つ丁寧に準備をすれば合意までの期間を短縮できます。
理想的な進め方とは?
① 現在の財産を確認
② メモ用紙に一覧表を作る
③ 関係のない財産を確認
④ 誰が何をもらうか話し合う
⑤ 財産分与の合意
先ず財産分与は婚姻中に蓄えた財産を清算(分配)するので、
離婚を考えた時点で自宅内にある①財産の確認から始めて下さい。
(例 家・マンション・自動車・預金・貯金箱・パソコン・テレビ・机etc)
次に話し合いをスムーズに進めるためにメモ用紙を用意して、
そこに①で確認した財産を記入し②一覧表(箇条書きで十分)を作って下さい。
尚、結婚前(独身時代)に購入したものや貯めていた預金、
婚姻中に相続で得た財産などは個人財産なので財産分与をする必要はありません。
注)預金(現金)については財産分与の対象になるケースもあります。
つまり③関係のない財産が②一覧表に含まれていないか確認して下さい。
そして↓のような流れで④誰が何をもらうかについて話し合います。
夫「マンションと車はもらいたい。」
妻「その代わり預金・パソコン・生活家電がほしい。」
夫「生活家電は一部譲ってほしい。」
妻「重い家電は譲るけど、軽くて運べる家電はもらっていいかな?」
そして全ての財産の取得が決まれば⑤財産分与の合意となります。
財産分与の相場について
◇ 話し合いで自由に決定
◇ 折半(50%)が公平かつ妥当
◇ 夫婦の状況に応じて柔軟に対応
協議離婚は夫婦間の話し合いをベースに解決を目指すものなので、
財産分与の相場(分配割合)についても自由に決定することができます。
(例 預金100万円の内、夫が20万円、妻が80万円受領した。)
ただ財産分与は婚姻中に蓄えた財産を清算(分配)するものなので、
一般的に相場は折半(50%)が公平かつ妥当だと考えられています。
(例 預金100万円の内、夫が50万円、妻が50万円受領した。)
補足として↓のような状況では相場に拘らず、
離婚時の夫婦の状況に応じて柔軟な結論を出すケースもあります。
妻「子供が小さいから、数年はフルタイムで働けない。」
夫「わかった。預金は折半ではなく8割持っていっていいよ。」
子供が幼い場合、親権者はフルタイムで働くのが難しいので、
このように離婚後の生活資金として多めに分配するという結論を出しています。
上述の通り、お互いが納得すれば相場を無視した合意を交わしても構いません。
こういう訳で財産分与の相場については折半を基本として、
離婚時の夫婦の状況に応じて柔軟に考えることをお勧めしています。
6.離婚協議書や公正証書を作るか悩んでいる方へ
「安心感が生まれて後悔しないものを作りたい」と考えているはずです。
「安心感や後悔」(思い)にこだわるのであれば、以下2点がポイントになります。
・夫婦間で離婚条件について話し尽くすこと
・離婚協議書や公正証書には細かい条件まで記載すること
当事務所ではご依頼者様のこの思いを大切にしたいので、
契約期間を設けずに時間をかけて離婚協議書や離婚公正証書の作成を進めています。
もちろん料金は「○万円~」ではなく固定料金なので、
どれだけ時間がかかっても追加料金は頂きません。安心して下さい。
この結果、質と内容の伴った離婚協議書や公正証書ができています。
当事務所では正式なご依頼の前に無料相談から始めています。
無料相談を通して、私(行政書士の辻)との相性や経験値を確認して下さい。
相談中・相談後に依頼を求めるような営業行為はしないので安心して下さい。
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お気軽にご利用下さい。お問合わせをお待ちしております。